「ぼく、何してるの?」

「さかあがりのれんしゅうだよ。きょうね、ともだちにみせてもらって、すごかったんだよ! だからぼくもできるようになって、おかあさんにみせてあげるの」

「お母さんのこと、好き?」

「うん! やさしいし、おりょうりじょうずだし、むかえにくるのがちょっとおそいけど……だいすきだよ!」

「そう。お母さんのこと、大事にするんだよ? ほら、来たみたい」

「あ、ほんとだ! ……ねえねえ、おねえちゃん、となりのがっこうのひと?」

「私は――」


「誰とお話してたの?」

「しらないおねえちゃん。でもね、すっごくやさしいひとだったよ。ぼくよりとしうえだけど、もうすぐとししたになるっていってた」

「何かのなぞなぞ? ふーん、何の事かしらねえ……もしまた会ったら、答え教えてもらってね。お母さんも気になるし」

「うん!」


「さようなら……」

 見知らぬ親子の背中へと一方的な別れを告げ、懐かしい校舎を振り返る。

「また、ここに通う事になるのかもね。私もそろそろ行かないと」

 母さん。大好きな母さん。私には時間が無くて、あまりお礼とか出来なかったけど……

 今度は、大丈夫だから。絶対、あんなに悲しませる様な事にはならないから。

 だからどうか、次の私にも、同じくらい優しくしてあげて下さい。

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